由美の会社は自宅から電車で約30分。
100kgを超すと電車の席も
二人分空いていないと座れない。
会社の通路も狭く感じる。
人とすれちがうとき、
必ずと言っていいほどぶつかってしまう。
体が重くてすぐに息がきれる。
それでも食べることはやめられない。
食べているときだけは、生きている気がする。
好きなものを食べられないなら、死んだ方がまし。
由美にとっては普通の感覚だったが、
みかねた母親にカウンセリングに連れて行かれた。
カウンセリングでは人を精神異常者扱い。
本人はいたって正常で、
食べることを楽しんでいるんだし、
食べて死ぬなら本望と思っているのだから、
放っておいてほしい。
カウンセラーなんて大嫌い。
どうせマニュアルどおりなんでしょ。
でもひとつだけひっかかる質問があった。
「何をしているときが一番楽しいですか?」
ちょっと考えて
「食べているときです」
と答えたけど、ちょっと「あれ?」って思った。
「楽しい」ってそんなことだったっけ?
ずっと昔は違ったような。
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