夢からさめて。

目が覚めたら、彼が隣にいた。

そうだ。

昨日はあのまま泊ってしまったんだ。

お酒を飲んだ訳でもないのに、

記憶がおぼろげだ。

雨のせいで感情がたかぶっていたのかも。

もう帰らなくちゃ。

美紀はとっさに思う。

今日は土曜日。

斎藤くんとデートの約束があった。

約束の時間にはまだ間に合う。

彼の目が覚める前に、ここを出たい。

急いで支度をしようとすると、

ベッドの中から腕をつかまれた。

「行かないで。やっと会えた。」

彼が美紀をじっと見つめる。

「私も。ずっと一緒にいたい。」

と言いかけて、代わりに

「約束があるの。」とだけ、言えた。

「そうか。」残念そうな彼。

彼は美紀の手をつかんだまま起き上がった後、

美紀の眼をじっとみつめる。

「今すぐ、どうこうできると思っていない。

でも、こうして一緒にいたい。

僕が一緒にいたいのは君だから。」

美紀はあいまいにうなずく。

このまま、時間は止まればいい。

そう思っても、時間が止まることはない。

すべてを捨ててやり直したいと思っても、

容赦なく日常はやってくる。

そこから逃げることはできない。

でも、昨日と同じ私ではいられない。

彼といるのがこんなに幸せだと

知ってしまったから。

たとえ他の人を傷つけても、

自分にうそをつくことはできない。

彼に会うということは、

たくさんのものを捨てなければならない。

たくさんの人を傷つけなければならない。

決まりかけた結婚。

両親との関係。

安定した将来の生活・・・。

いろいろ考えると、

変えるのは難しいことばかり。

でも、闘っていこう。

自分にうそをつかないために。

「不倫でしょ。」と後ろ指をさされても、

自分が自分でいられるように。

強くなろう。

この先どうなるか分からないけど、

少なくても今この瞬間だけは、そう思う。

すっきりした気持ちで、

美紀は彼のいる部屋を出た。


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