恋の予感

「出会い」ってどこにあるんだろう。

運命の人に出会ったとき「この人だ!」って分かるのかな。

結婚した人にきいても「この人と結婚すると思った。」という人もいるけど、

「何となく」という人も多い。

裕子は「絶対に分かる」と信じていた。

でも33年たっても「この人」と思う人はいない。

でも、会社でちょっと気になる人はいる。


7つ年下の隣の部署の男の子。

用事もないのによく裕子のいる総務課にきて、

何かというと裕子にちょっかいを出していく。

「裕子に気があるんじゃない?」

と同期の由香は言うけど、裕子には信じられない。

「33の女なんて26の男の子からみたらおばさんよね。」

と思ってはいるものの、話しかけられるとうれしくて、

ついついおしゃれをして会社に行ってしまう。

裕子自身も彼氏にするなら自分より年上と思っていたが、

彼のおかげで最近ちょっと楽しいのは確かだ。

「近くに新しいタイ料理のお店ができたんですよ。

今度の金曜日に行ってみませんか。」

会社の廊下で彼から誘われた。

裕子が「タイ料理が好き」と言ったのを覚えていたのだろう。

すごくうれしくなって舞い上がっている自分がいたが、

26歳の彼は、決してもてないタイプではない。

彼女がいて当然だろうし、社交辞令だろうと

冷静な裕子がブレーキをかけた。

「ごめんね。金曜日は用事があるの。」

裕子はそう言ってしまって、心の中で「あ~あ。」とため息をつく。

彼が裕子のことを気に入ってくれているのは確かだ。

でもそれが恋愛に結びつくかどうかは分からない。

職場で面倒なことになったら嫌だし、「勘違い女」として傷つくのも怖い。

席につくと彼からメールがきていた。

「さっきは突然すみません。

どんな風に誘ったらよいか分からなくて不自然になってしまいました。

今度の金曜日でなくてもよいので、嫌じゃなければ一緒に行ってください。」

どきどきする。

若くてまっすぐでまぶしい。恋の予感。

「私、恋していいのかな。」

最初はただの隣の部署の顔見知りだった。

「この人でいいのかな?」

そう思いながらもどきどきがとまらない。

返事を送らなくちゃ。

「来週なら大丈夫です。」と。


コメント

タイトルとURLをコピーしました