旅立ち(2)

「お母さんって、ずっと家にいるから暇でしょ?

私、お母さんみたいにはなりたくない!」

最近中学生の娘に言われた。

別に舞だって「お母さんみたいになって欲しい」とは思わないけど、

これだけ大事に育てたのに、そこには尊敬や感謝の念は全くない。

むしろ軽蔑に近い何かがある。

最近の舞は娘の言葉がいつも頭のどこかにひっかかって、

どうもやる気が出ない。

無償の愛を与える親だって人間なのだ。

洗濯物を干そうと決めて、ソファーから立ちあがろうとして、

もう一度テレビに目をやる。

会見はいつの間にか終わっていて、そこには美しい海。

どこ?と思っていたら、「石垣島」と出た。

「あ、ここに行きたい!」


舞は無償にそこに行きたくなってしまった。

旅行なんて子供が産まれてからほとんど行っていない。

テレビをみていて本当に行きたくなるなんて、テレビにのせられている。

しかも東京から石垣島なんて遠すぎる。

普段の舞だったらそこで終わっていただろう。

しかし、なぜかその日は違った。

「どうしてもそこに行かなければならない。

行かなければ、私がだめになってしまう。」

そんな気がした。

幸いにも今日は金曜日。

旦那も外回りでめずらしく午後には帰ってくる。

「もういいや!」

洗濯物もそのままで掃除もしない、

今日使おうと思って解凍しておいた豚肉も、もうどうでもいいや。

この海を見に行こう。

そう決めたとたん湧いてくるエネルギー。

今までソファーで脱力していたのがうそのよう。

どこからそんなエネルギーが出てくるのか舞にも分からない。

久々にしっかりお化粧をして、

リゾート風のワンピースに着替えて、出かけよう。

私に戻る旅に。

自分を取り戻す旅に。

リビングのテーブルにメモを残す。

「石垣島に行ってきます。日曜日には帰ります。」

これでOK。

きっとみんなびっくりするわ。

想像するとわくわくする。

向こうについたら電話しよう。

きっともっと家族に優しくなれる。

そんな気がする。

コメント

タイトルとURLをコピーしました