現場主義

その夜、弘子は彼に相談した。

弘子のお店にみえたお客様に、

本当はサイズの合わない服を売ってしまったこと。

お客様は気付かずに喜んで服を買ってくださったこと。

「それは、弘子が悪いんじゃない。

商売なんだから利益を上げる行動をとるのは当然のことだ。

でも、どうしてもひっかかるんだろ?

弘子はどうしたいと思ったの?

会社の方針とかマニュアルは関係なく、

君がしたいようにできるとしたらどうする?

君はどうして今の仕事をしているの?」


大好きな服を売れたら楽しいだろうなという気持ちで

アパレルメーカーに入った。

弘子が入社した頃は、

まだ大卒の販売員の採用は少ない時期で

幹部候補生としても期待されていた。

でも偉くなりたいわけじゃない。

「大好きな服を売って、

お客様にも喜んでいただけたらうれしい。」

弘子はそんな単純な気持ちを忘れていた自分に気づいた。

サイズが合わない服なら、お客様にも正直に申し上げるべきだ。

お客様との信頼関係ってもっと大事なもののはず。

店舗が大きくなり、売上もあがるうちに、

「売ること」ばかりに集中していた自分がいた。

「楽しい」とか「うれしい」なんて言っていられない。

利益をあげることが最優先になっていた。

そもそも「自分が売る」ということよりも

人の管理や販売戦略にばかり時間をとられていた。

「お店でお客様に服を売りたい。」

これが弘子の原点だ。

キャリアが積みあがるにつれて

このまま現場から離れてしまうのだろうか。

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